【イベントレポート】北陸RDX 5ヶ年最終報告&未来戦略カンファレンス 〜産学官金連携で描く、持続可能な地域イノベーションの未来〜

· お知らせ

2026年2月25日に経済産業省の「産学融合先導モデル拠点創出プログラム(J-NEXUS)」として過去5年間にわたり活動してきた「北陸RDX」の集大成となる、「北陸RDX 5ヶ年最終報告&未来戦略カンファレンス」をオンラインにて開催しました 。

約300名(アーカイブ配信含む)にお申込みいただいたイベントの熱気あふれるセッションの模様を、ダイジェストでお届けします。

【第一部】 北陸RDX 5年間の軌跡

第一部では、北陸RDXの総括エリアコーディネーターであり、株式会社RICHの代表を務める井熊 均より、これまでの活動成果と今後の体制について報告を行いました 。

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現場主義を貫いた「伴走型」の事業支援

北陸RDXは、北陸の公的機関や経済団体、国立大学、地域金融機関、さらに首都圏の専門家なども交えた強力なコンソーシアム体制でスタートしました 。その特徴は、単なるマッチングにとどまらない「徹底した現場志向」です 。

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北陸RDXでは「推進計画」として、産学連携から産まれた約50の新事業プロジェクトに対して、参画する北陸地域の4つの国立大学および各県の支援機関から選出された上級エリアコーディネーターからなるグロースチーム が伴走型で支援を行ってきました。このきめ細やかな支援により、当初設定していた産学連携プロジェクト創出などのKPIを概ねクリアするという成果を上げることができました 。

補助事業からの自走化への挑戦「株式会社RICH」

特筆すべきは、国の事業期間の3年目にあたるタイミングで、事業期間終了後を見据え継続的な事業支援を担う組織として「株式会社RICH」を設立した点です 。

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これまでの多くの補助事業が抱えていた「事業期間終了後の活動の縮小」という課題に対し、北陸RDXは事業期間中に自立化の基盤を作るというアプローチをとりました 。地域の有力企業からの出資を受け、首都圏のトップクラスの専門家(技術、法務、知財、ファイナンスなど)をアドバイザーに迎えることで、北陸と全国の市場をつなぐ強力なハブとして機能し始めています 。

持続可能な地域イノベーションのために

第一部の結びとして、井熊は、持続可能な地域イノベーションのためには「人と人とのコミュニケーション」「実績の積み上げと自走化への備え」、そして「地域への想いと外部連携のバランス」が不可欠であると総括しました 。

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【第二部】パネルトーク「北陸の勝ち筋 | 持続可能な地域イノベーション」

第二部では、北陸の産学および経済産業省の本事業担当部署からゲストを迎え、井熊のモデレートによるパネルディスカッションが行われました 。

<登壇者>

• 下村 昭夫 氏(アイディッシュ株式会社 / 下村漆器店 代表取締役)

• 中田 泰子 氏(北陸先端科学技術大学院大学 未来創造イノベーション推進本部長補佐 / 地域イノベーション推進センター長)

• 吉原 圭祐 氏(経済産業省 イノベーション・環境局 大学連携推進室 係長)

トークテーマ1:北陸RDXの5年間を振り返って

最初のテーマでは、これまでの5年間で地域にどのような変化があったのかが語られました。

越前漆器の技術を応用し、病院や福祉施設向けのIH 調理システム「ディッシュクック」を開発した下村氏は、開発当時の状況を振り返りました 。「それまではモノづくりに集中してきたが、コトづくりが求められる中で、決断に迷うことも多かった。その中で、北陸RDXや株式会社RICHに伴走していただき、自分たちのレベルに合わせた支援を受けられたことは、大きな自信と販売実績につながった」と、現場視点での伴走支援の価値を強調しました 。

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一方、大学の立場で産学連携を推進してきた中田氏は、北陸エリア全体の連鎖的な盛り上がりを指摘しました 。「北陸RDXができたことで、『マッチングハブ』というイベントで生まれた種を、社会実装へと育てるという課題が解決されました。さらに北陸RDX以外でも様々な産学連携プロジェクトが立ち上がるなど、北陸全体が同じ方向を向いて歩み始める大きな転機となりました」と語りました 。

トークテーマ2:新生・北陸RDXとRICHへの期待、北陸の勝ち筋

続いて、国の補助事業を卒業し、自走フェーズに入る新たな組織への期待が語られました。

経済産業省の吉原氏は、北陸RDXの「産学連携から成長支援までを一気通貫で行う基盤」を評価しました 。「北陸には伝統工芸や繊維、機械製造など、全国的に高いシェアを持つ産業が多数あります。そうした企業が、下村社長のように新たなチャレンジを通じて再成長することこそが『北陸の勝ち筋』です。北陸RDXとRICHは、その支援を重点的に行い、北陸ならではの産学連携モデルを牽引してほしい」と強い期待を寄せました 。

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中田氏も、株式会社RICHの存在意義について触れ、「国の事業終了後も活動を継続できる『自立した組織』があることは、地域に大きな安心感と未来への広がりをもたらします。地域の未来を創る推進力として、その存在価値をさらにアピールしていただきたい」と述べました 。

トークテーマ3:持続可能な地域イノベーションに必要なもの

最後のテーマでは、今後もイノベーションを生み出し続けるために何が重要に関する議論が交わされました。

下村氏は、経営者の視点から「ビジョンの重要性」を力説しました 。「国の補助事業などは、あくまで『チャレンジのきっかけ』です。重要なのは、申請書に書いた自らのビジョンを信じ抜き、やり続けること。ビジョンを持ち続けていれば、人やモノ、カネは後から必ずついてきます」と語ってくれました 。

中田氏は、地域全体としての「共有ビジョンの必要性」と「人の厚み」を挙げました 。「地域をどうしていきたいかという強いビジョンがなければ、連携は長続きしません。北陸には想いの強い人材が豊富にいます。大学の『知』、企業の『活力』、自治体や金融機関の『支援』を掛け合わせる仕組みが、持続可能性の鍵になります」と指摘しました 。

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最後に吉原氏は、国の事業の本質について言及しました 。「国の事業は、まさに地域のビジョンを実現するための『チャレンジのきっかけ』として使っていただくものです。北陸RDXのように、早い段階から事業終了後の自走化を構想し、実行に移したことは、全国のモデルケースになります。経済産業省としても、引き続きオブザーバーとしてこの持続可能な仕組みづくりに伴走していきたい」と締めくくりました 。

おわりに

本カンファレンスを通じて、「北陸RDX」がこの5年間で産学連携プロジェクトの枠を超え、地域に新しい挑戦の文化と、それを支える強固なネットワークを根付かせつつあることを、皆様にお伝えできたのではないかと考えています 。

補助事業の終了は「ゴール」ではなく、自立した地域イノベーションの「新たなスタート」です 。新生・北陸RDXと株式会社RICHは、これからも北陸の魅力と全国の市場をつなぎ、地域発のイノベーション創出に向けて力強く歩みを進めていきます 。

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました 。

※本イベントは2026年2月に実施いたしました。登壇者の所属や肩書は実施当時のものとなります